『エクサバイト』 服部真澄
『エクサバイト』
服部真澄 角川書店 1700円+税 数年前まで、本に糸目はつけない主義だった僕も、自室に積もりに積もった本の山に耐え切れず、最近では文庫本になりそうな作品は、単行本では買わないようにしています。しかし、新刊が出るとかなりの確率で買ってしまう作家が数名います。本書の著者である服部真澄さんもその一人です。 デビュー作である『龍の契り』に圧倒され、それ以来、ほぼすべての作品を読んでいます。実は本書と並行して、文庫になった『海国記』も読んでいます。テーマの幅をアグレッシブに広げつつある服部さんのバイタリティには、目を見張るものがあります。 さて、本書は2033年という時代から話が始まります。今から約25年後の世界です。ムーアの法則に代表されるように、これまでメモリーやプロセッサーの処理能力は、約18ヶ月ごとに2倍というスピードで進化を遂げてきました。その延長上にある2033年。世界中のあらゆる出来事が映像として記録される時代。ちなみに、タイトルのエクサバイトとは、10億ギガバイトのこと。 その時代には、多くの人が、ヴィジブル・ユニットと呼ばれる画像(および音声)記録装置を、身体に埋め込んでいます。つまり、その人が見たり聞いたりしたものが、全て記録されてる状況なのです。そんなもの記録してどうするのか?と、現代の我々は思いがちなのですが.... その後のお話は、読んでのお楽しみです。面白いので一気に読み進めてしまいます。そして、読み終わった後に考えてしまいます。自分が生きていたという記録は、どこにどうして残るのだろうか。今の常識では一部の人の記憶にしか残りません。でも、エクサバイトの時代になると、記憶ではなく、明確な記録として残る可能性があるのです。ただし、残ることとそれが、その時代の人に影響を与えることとはまた別の話なのですが。 情報化が、加速度的に発展しつつある現代に潜む期待と不安を、実に巧妙に描いている作品だと思いました。
by makani_tomo
| 2008-02-17 22:22
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