走る!飲む!読む!

カテゴリ:読む( 106 )

『狼は帰らず』 佐瀬 稔

『狼は帰らず―アルピニスト・森田勝の生と死』
佐瀬 稔
山と渓谷社 (yama‐kei classics)
1680円(税込み)

こちらも図書館で借りました。森田勝さんについても、少し聞きかじった(読みかじった?)くらいで、詳しいことは知りませんでした。K2のアタック隊で2次に回ったことを不満として、下山してしまった話ばかりがいろいろな本に取り上げられているので、どうしてもそういうイメージを持ってしまいますが、冷静に考えればそういう出来事は森田さんのごく一面であることは想像は付きます。

しかし、本書を読み進めると、かなり激しい想いを持って山に臨んでいたことがひしひしと伝わってきます。若い人にスポンサーが付いて、どんどん海外の山に登る現状からは、少し想像が付かないのですが、高度経済成長時代の日本とは、経済の発展の底辺を多くの若い労働者が支え、同時に彼らが日本の山に向かっていたのでしょう。

大学の山岳部と社会人の山岳会との確執などもあったようですが、今では大学の山岳部も廃部になるところも少なくないようで、時代の移り変わりを感じます。一方で、30年前には極僅かな最先端のアルピニストしか行くことの出来なかったアルプスやヒマラヤには、今ではお金さえ出せば、(登頂できるかどうかは別として)行くことができる世の中になっています。

山に限らず、ひとつのことにどこまで純粋に立ち向かうことが出来るか、これは生き方についての大きなテーマなのですが、今の世の中は一見仕事に思えないことでも、誰かが評価してくれると、多少はお金が付いてくる可能性も多くなっています。それだけ社会に余裕ができたということでしょう。何かを極めることに取り組み易い世の中ともいえます。一方で、自分を含めて仕事と趣味と家族とのバランスを取ることに四苦八苦している人も少なく無い、いや多くの人がそうなのではないでしょうか。皮肉なもので、社会全般に余裕が出てきたら、純粋に極める人が減ってきているのかもしれません。

僕自身、バランスを取った生活に不満を持つわけでもなく、むしろその中で如何に自分のパフォーマンスを上げるかということに挑戦しているつもりです。もちろん、森田さんの山に賭ける気概に較べることなど出来ないレベルですが。

とはいえ、森田さんも結婚して、子供が出来て、定職を持つようになり、家族のことを気にしながら山に向かっています。そういう一面を知ることが出来て、少しホッとしています。でも、それはそれで家族には辛い結末を意味しています。やはり、僕は基本的には安全な範囲内での山にしておこうと思います。昨年の夏は、ちょっと危ない遊びをしてしまいましたが、今年は控えましょう。
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by makani_tomo | 2008-05-15 10:42 | 読む

『激しすぎる夢』 長尾三郎

『激しすぎる夢』「鉄の男」と呼ばれた登山家・小西政継の生涯 
長尾三郎
山と渓谷社
1700円+税(2001年時点)

登山家小西政継さんについては、その登攀記録や山学同志会での激しいトレーニングなどを、聞きかじっていたものの、まとまってその人となりを記した本を読んだことがありませんでした。実はこの本、以前から図書館で探していたのですが、家から少し遠い図書館で、ようやく見つけて借りることができました。

若い頃の激しい小西さん、中堅になり組織をまとめるために奔走する小西さん、50を過ぎてからスタイルを変えながらも山に登り続けた小西さん。いろいろ姿あるけれど、山が好きで、山に真摯に向き合う姿勢は、きっと変わっていないはず。要は、「自らの気力と体力と技術を高めて、経験を積み重ね、力量に見合った山に、見合ったスタイルで、自らの責任で登る」ということでしょうか。これは、初心者にも通ずることですね。

リーダーとしての小西さん、研修トレッキングなどもやっていたのですね。こういう研修なら、喜んで参加したいものです。リーダーこそ、率先して雑用をやるべし、というスタイルは、現代的なリーダー論にも通じそうな話です。生きておられたら、新任マネジメント研修や新任役員研修などに引っ張りだこだったかもしれません。

一方、家族想いの小西さんの姿は、本書を読んで初めて知りました。激しさや厳しさのベースには、人間としてのやさしいものがあったということではないでしょうか。『小西さんちの家族登山』という本もあるので、次はこれを探して読んでみたいですね。

しかし、マッキンリーでは偶然一緒になった野口腱さんと登頂を果たしたとは、知りませんでした。植村さんが亡くなった地で、ベテランと新進気鋭の両名がテントを並べるとは、運命もなかなか粋な演出をしたものです。いい本でした。
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by makani_tomo | 2008-05-13 02:53 | 読む

『一瞬の風になれ』 佐藤多佳子

『一瞬の風になれ』 1,2,3 
佐藤多佳子
講談社
1400円,1400円,1500円
(ブックオフ価格750円,750円,800円)

評判が良いので、以前から読みたいと思っていた作品です。しかし、後々文庫になりそうな作品はなるべく買わない、買うとしてもブックオフでとしているので、なかなか読めませんでした。先日、会社帰りにようやくブックオフで見かけて、買い求めました。

普段読まないジャンルというか文体の小説なのですが、確かに面白い!読みやすいので、するすると読み進めます。走るっていいなって、素直に思えます。自分が中学3年生の時に、この本を読んでいたら、高校に入学して陸上部に入っていたかも。

実は僕の兄は、中学高校時代、陸上部にいて、かなり優秀な選手でした。市や県の大会で、メダルやトロフィーを度々もらってくる姿が、とてもまぶしく我がことのように誇らしげに感じたものです。僕自身は、サッカー部でして、それほど強くもなく、賞には全く無縁でした。

メダルはともかくとして、陸上に限らず、スポーツに真剣に打ち込む姿は、高校生であれ、おじさんであれ、いいものだと思います(思いたい?)。読みながら、走りたくて、ムズムズしてしまいました。もう一度、高校時代に戻れたら、スポーツ系のクラブに入っていたかも...(現実には、オーケストラでした。)せめて気持ちだけは、若いつもりで、自分のパフォーマンスアップに励みたいですね。気持ちのいい、読後感でした。
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by makani_tomo | 2008-05-05 23:26 | 読む

『無実』 ジョン・グリシャム

『無実』 上・下
ジョン・グリシャム
白石朗 監訳
ゴマ文庫
各800円(税込み)

リーガル・サスペンスの巨匠ジョン・グリシャムによる、初めてのノンフィクション作品です。1982年オクラホマ州の小さな町で起きた殺人を巡る冤罪事件を扱っています。

事件後、捜査は思うように進まず、5年後になって容疑者として逮捕されたのは、地元出身の元プロ野球選手ロン・ウィリアムスンとその友人のデニス・フリッツ。その逮捕理由は実に曖昧です。その後の取り調べも、(本書の記述通りなら)あってはならない「真犯人の創造」です。

長い裁判の結果、ロンは死刑判決、デニスは終身刑の判決を受けます。そして、刑務所への収監。救いは、アメリカでは死刑判決を受けると、自動的に上訴が行われます。しかし、その上訴審も全て敗訴。そして、1994年9月27日が刑の執行日と決まりました。

その土壇場の状況において、弁護士が取った措置は、人身保護令状の請求でした。これは、囚人の拘禁状態が適法かどうか判断するために、囚人に出廷を求めるものです。この申請を読んだのが連邦裁判所治安判事ジム・ペインでした。その後の審議の結果、ロンの死刑停止が決まったのは、刑の執行日のわずか5日前でした。

その後、再審が行われ、ついに1999年4月15日、無実の判決が出ました。逮捕から14年の歳月が流れていました。しかし、逮捕以前から精神的な病を抱えていたロンは、その後の境遇の中で、更に病んでいました。自由の身になったものの、心の病は如何ともし難く、日常生活が平穏におくることができない状態だったのです。そして、最後は肝硬変を患い、2004年12月4日亡くなりました。享年51歳という若さでした。

おそらく、アメリカだけではなく、日本でも似たような強引な捜査は行われているのだと思います。刑務所での刑務官による暴行事件も、数年前に話題になりました。

それにしても、本人の苦痛やそれを支える家族、支援者の気持ちの強さは、想像が付きません。一方で、被害者の遺族は、釈然としない思いを、依然として抱えているはずです。
今また、ロス疑惑が再燃しています。この場合は逆の意味での(捜査当局側の)粘りです。

なお、本書がアメリカで出版された時点では、地区首席検事のビル・ピーターソン氏は、依然としてその地位に居たそうですが、現在は職を辞して自らの職務上の正当性をホームページ上で訴えています。さらに、ジョン・グリシャムを名誉毀損で訴える裁判を起しているそうです。

彼には彼の言い分があるのだと思います。彼の仕事の中で、こういう事例が全てだったとは思いません。しかし、立場の違いは非情です。多くの仕事のひとつは、相手にとっては人生の大半であることもあるのです。

グリシャム独自の緻密で深い文章です。しかし、下巻に入ると、ぐいぐい読み進むことになるでしょう。久々にどきどきしながら読み終えました。
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by makani_tomo | 2008-03-06 10:26 | 読む

『春、バーニーズで』 吉田修一

『春、バーニーズで』 
吉田修一
文春文庫
520円(税込み)

数年前に芥川賞を受賞した『パーク・ライフ』を読んで以来、時々読む作家です。文体というか、ほどほど軽い雰囲気が比較的好きなのです。

この作品は、家族でバーニーズに行ったら、昔の恋人を見かけて...という、ありがちな設定。そこから、短編が続きます。

話は変わりますが、昔から片岡義男さんの作品が好きでした。主に角川文庫で出ていた、背表紙が赤い本です。当時、高校生くらいでしたが、想像も付かないくらいクールで都会的な世界にあこがれたものです。

本書の雰囲気は、ほどほどクールで、ほどほど都会的。きっと、片岡義男の世界よりは、こちらの方が現実なんだろうなって思います。片岡作品との共通点は、写真の使い方でしょうか。著者の手による写真ではありませんが、いい雰囲気を醸し出しています。

やはり、今週末は、カメラ片手に走ってみようかな。
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by makani_tomo | 2008-02-22 09:51 | 読む

『海国記』 服部真澄

『海国記』上・下 
服部真澄
新潮文庫
上巻700円(税込み)
下巻660円(税込み)

こちらは文庫になるまで待っていました。単行本は、『海国記 平家の時代』という副題付だったようです。

舞台は平安から鎌倉時代。テーマは、海の道。海の道は、西国から様々な荷を都に運ぶ道。そして、宋からの財を都に運ぶ道。この道を制するものが、財を手にし、朝廷での出世の糧にしたという。そんな海の道を巡る人々の物語です。

平清盛や源平合戦などをテーマにした小説はたくさんありますが、同じ出来事も視点を変えるとまた違った物語が見えてきます。そういう意味で、海の道という切り口は、実に面白く感じました。

本書には巻末に主な登場人物の系図や地図などが掲載されていますが、できればもう少し詳しい資料を片手に読むと、より面白く読めるかもしれません。
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by makani_tomo | 2008-02-18 23:32 | 読む

『エクサバイト』 服部真澄

『エクサバイト』 
服部真澄
角川書店
1700円+税

数年前まで、本に糸目はつけない主義だった僕も、自室に積もりに積もった本の山に耐え切れず、最近では文庫本になりそうな作品は、単行本では買わないようにしています。しかし、新刊が出るとかなりの確率で買ってしまう作家が数名います。本書の著者である服部真澄さんもその一人です。

デビュー作である『龍の契り』に圧倒され、それ以来、ほぼすべての作品を読んでいます。実は本書と並行して、文庫になった『海国記』も読んでいます。テーマの幅をアグレッシブに広げつつある服部さんのバイタリティには、目を見張るものがあります。

さて、本書は2033年という時代から話が始まります。今から約25年後の世界です。ムーアの法則に代表されるように、これまでメモリーやプロセッサーの処理能力は、約18ヶ月ごとに2倍というスピードで進化を遂げてきました。その延長上にある2033年。世界中のあらゆる出来事が映像として記録される時代。ちなみに、タイトルのエクサバイトとは、10億ギガバイトのこと。

その時代には、多くの人が、ヴィジブル・ユニットと呼ばれる画像(および音声)記録装置を、身体に埋め込んでいます。つまり、その人が見たり聞いたりしたものが、全て記録されてる状況なのです。そんなもの記録してどうするのか?と、現代の我々は思いがちなのですが....

その後のお話は、読んでのお楽しみです。面白いので一気に読み進めてしまいます。そして、読み終わった後に考えてしまいます。自分が生きていたという記録は、どこにどうして残るのだろうか。今の常識では一部の人の記憶にしか残りません。でも、エクサバイトの時代になると、記憶ではなく、明確な記録として残る可能性があるのです。ただし、残ることとそれが、その時代の人に影響を与えることとはまた別の話なのですが。

情報化が、加速度的に発展しつつある現代に潜む期待と不安を、実に巧妙に描いている作品だと思いました。
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by makani_tomo | 2008-02-17 22:22 | 読む

『異邦人』 パトリシア・コーンウェル

『異邦人』 上・下
パトリシア・コーンウェル
相原 真理子 訳
講談社文庫
各800円(税込)

毎年年末には、コーンウェルの検屍官シリーズ。風物詩というには、風情がないのですが、なんとなく年中行事化しているのは事実です。

さて、検屍官シリーズも長くなっています。ここまでシリーズが長くなると、新展開が難しくなるというもの。007は、次々現れる敵と新しいガジェット、そしてボンドガールで、シリーズを引っ張ってきましたが、スカーペッタは007の様なヒーロータイプの主人公ではないし、コーンウェルもさぞかし頭を悩ませたのではないでしょうか。

そのせいではないとは思いますが、登場人物全員が、なんだか疲れている感じがします。スカーペッタも、「いいかげん、検屍官シリーズも終わりにしてくれないかしら...」とつぶやいているような気がします。そういう、気だるいトーンが全体を覆っています。その分、殺人鬼の描写が、相対的に軽く感じられます。

こう考えると、同じ主人公で長くシリーズを続けるのは、とても難しいことだと思います。『鬼平犯科帳』や『御宿かわせみ』など、時代物のシリーズの用に、盛り上がりや変化を付けすぎないのが、長く続けるこつなのかもしれません。
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by makani_tomo | 2008-02-01 09:49 | 読む

『最後の陪審員』 ジョン・グリシャム

『最後の陪審員』上・下 
ジョン・グリシャム
白石朗 訳
新潮文庫
各700円(税込み)

久しぶりのジョン・グリシャムの新作です。彼の作品は大好きで、邦訳されている作品は全て読んでいます。海外に行った際に、新作を買ってきて、ゆっくり読み進めているうちに、(あまりにも読む速度が遅いので)邦訳が出版され、そちらに移行してしまう...ということを繰り返していますが。

久しぶりのこの作品は、リーガルサスペンスという枠ではあるものの、これまでの作品に見られるスピード感はありません。むしろ、ひとつの事件を軸にしながらも、時代の流れを描いている様な作品です。ある意味で、グリシャムの新境地かもしれません。

主人公の野心と迷い、そして根底に流れる純粋な気持ちが、上手くちりばめられています。そして、ラストは、ちょっとジーンとしてしまいます。

ご興味のある方はぜひご一読を。
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by makani_tomo | 2008-01-26 01:30 | 読む

文書・書籍について

2年前まではある白書の執筆をしていたこともあり、また2年前からは大学院での講義をしていることもあり、ある分野の書籍に関しては、それなりの書籍を所蔵しています。しかし、ある程度古い文献になると、大学の図書館に頼らないといけないですし、大学でも残っていないこともしばしばです。

今朝の朝日新聞で、1997年に破綻した山一證券の残した膨大な社内資料が、東京大学経済学部の図書館に残っており、その整理・分析作業が続けられていることを知りました。その量は約700箱だとか。分類だけでも大変な作業ですが、実に貴重な資料が散逸せずに残されたことは、研究者の端くれとしても非常にうれしいことです。

そういえば、以前ある役所に勤めていたときに、そこの図書館に非常に古い文献が残されていて、ビックリしながら興味深く読んだのを思い出しました。また、多くの論文にリファレンスされているにもかかわらず、めぐり合えていなかったその原著を見つけたときは、大喜びでした。

役所に勤めていると、国立国会図書館に収蔵されている書籍や雑誌を、館外に貸し出ししてもらえました。これも、とても嬉しかったです。役所に来てよかったと思ったものです。もちろん、その扱いには、非常に緊張しましたが。

国会図書館などは特別な存在ですが、多くの普通の図書館では、その収蔵能力には限界がありますから、古い本は定期的に廃棄または放出されます。僕も、近所の図書館でそういう本をもらってくることがあります。それはそれで嬉しいのですが、知の集積がなくなるようで、寂しいというか、それでいいのかという気もしています。特に僕の研究分野などは、マイナーな分野なので、1冊の書籍が3000~5000部刷られるのみ。今でこそ、自分で可能な限り買うようにしていますが、古いものは神田あたりの古本屋でもなかなか探し出せません。今は、大学の図書館が使えるからいいのですが、それができなくなると...

貴重な本は、PDFでもいいから残してもらいたいなぁ。PDFという形式も、30年後に使われているかどうかわかりませんが、5年くらいは何とかなるでしょう。その間に、せっせとプリントアウトして、紙で保存しなくては。って、思いっきりアナログですが、そうでもしないと確実に残せないものが多いような気がしています。
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by makani_tomo | 2008-01-09 14:26 | 読む



走って、飲んで、そして読んでおります。
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