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『無痛』 久坂部 羊

『無痛』 
久坂部 羊
幻冬舎文庫
880円(税込)

医師でありながら小説を書く人は、意外と多いですね。古くは森鴎外、斉藤茂吉や北守夫、渡部淳一。よく読む人では帚木蓬生などなど。そして、本書の著者も本職は医師なのだそうです。

久坂部さんの著書は、初めてでした。名前は聞いたことがあるかな?という程度。しかし、新聞広告に大きく出ていて、興味を持ち、その日のうちに書店で買い求めました。

読み始めてしばらく、天童荒太さんの小説に近いものを感じました。人間の内面にとぐろを巻く、鬱屈した欲望の描き方など、かなり近いものを感じます。正直言って、嫌悪感を覚えるほどなまなましい表現です。実は苦手なのですが、でも読み進まずにはおれないものを感じます。

医師ならではの緻密な表現はさすがです。どこまでが事実で、どこからが創作なのかわからなくなるほどです。登場する医師の特殊な能力と言うのは創作だと思うのですが、その診断力事態はあながちウソではないような気もします。

ストーリーの展開も、かなりひきつけられます。最後は、一気に読み通してしまいました。そして、過去の著作を読むべく書店に走っていました。少し重いですが、オススメの一冊です。
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by makani_tomo | 2008-10-09 09:54 | 読む

『荒野へ』 ジョン・クラカワー

『荒野へ』 
ジョン・クラカワー
佐宗鈴夫 訳
集英社文庫
667円+税

映画を観て興味を持ったら、可能な限り原作を手に入れて読んでいます。例えば、ブラッド・ピットが主演した『セブン・イヤーズ・イン・チベット』は、映画を観てとても興味を持ち、白水社から出ている原作を買い求め、読み、さらに感動を深めました。その年のクリスマスには、仲の良い友人たちに、その本をプレゼントしたくらいに。

さて、本書も先日映画を観て、興味を持ち、その日のうちに原作を買い求めました。

<映画を観る予定の方は、これ以上、読まないでください。>























想像はしていましたが、原作には映画で描かれていないところがたくさんありました。具体的には、映画で描かれているよりもはるかに色々な土地を回った末にアラスカに行っているようです。とはいえ、映画でも、ポイントはちゃんと掴んでいます。しかし、各地で働きながら少しお金を貯めては、ヒッチハイクで移動するという生活を続けていたようです。

実は映画を観て不思議に思っていたのは、なぜあんなところにバスが乗り捨てられていたのかということです。乗り捨てられたとはいえ、その場所までバスが来たわけですから、荒れているにしても、それなりの道が残っているはずです。一度、街に帰ろうとして川に阻まれて、バスに戻ったわけですが、その時になぜ東に向かう道(スタンピード・トレイルというらしい)を辿ろうとしなかったのでしょうか。事実、原作者のクラカワー氏を含め大勢の人が、オフロード車でこの道を使ってバスを訪れているようです。(クリスの両親は、ヘリで訪れたようですが)本書では、バスがその場所にある理由が、ちゃんと書かれています。なるほど...

本書では、かなりショッキングな事実も明らかにされています。彼が街に戻ろうとして阻まれた川(テクラニカ川)は、雪解けが進むと水かさが増えて激流になるのですが、それでも多少は渡りやすいポイントはあるようです。事実、彼が渡ろうとしたポイントから1マイルほど歩けば、比較的渡りやすいポイントがあったようです。更には、それよりも近くに、アメリカ地質調査所によって川の間にケーブルが張られており、しかもそのケーブルには人が乗れるゴンドラが付けられており、当時はバス側にゴンドラがあったとのことです。彼が、もう少し川に沿って歩いていたら、無事に渡ることができたかもしれないのです。

どうやら、彼は詳細なアラスカの地図を持っていなかったようなのです。普通の感覚では考えられないことなのですが、彼は当初戻るつもりがなかったので、あえて地図は持たなかったのでしょう。自分も、彼とは動機が違うものの、冷静に考えれば無謀とも思えることをしてきているので、多少は理解できるところはあるのですが、やはり決定的に異なるのは、「戻る」という意識なのかもしれません。

いろいろな意味で、興味深い本でした。そして、You Tubeでは、クリスに関する映像が多数掲げられています。彼が持っていたカメラに収められていた写真もいくつか見ることができます。アラスカのバスは、若者にとっての、ちょっとした聖地になっているようです。自分の中でも完全に消化されていないのですが、考えさせられる映画と原作でした。映画で興味をもたれた方は、原作も読まれることをお勧めします。
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by makani_tomo | 2008-10-04 00:43 | 読む

『地図男』 真藤順丈

『地図男』 
真藤順丈
メディアファクトリー
1200円+税

雑誌『ダ・ヴィンチ』の第3回ダ・ヴィンチ文学賞受賞作品です。以前から書店で見て気になっていたのですが、先月の給料日、少し気が大きくなった時についつい買ってしまいました。ついついというのは、この手の文芸書は、しばらくすればブックオフに並びますし、2年も経てば文庫本になる作品も少なくないので、なるべく買わないようにしているからです。しかし、『地図男』というタイトルは、暇さえあれば「山と高原地図」を眺めている僕には、とても魅力的だったのです。

注目すべきは、まず地図男というアイデアです。詳しくは書きませんが、奇想天外でありながら、もしかしたらありそうな、そんなシチュエーションです。そして、地図上で展開される物語は、もっと奇想天外です。しばしば訪れるあきる野も登場します。

そして最後に、やられた!という謎解きが...それは、読んでのお楽しみです。
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by makani_tomo | 2008-09-18 02:11 | 読む

『東京小説』 椎名誠,林真理子 他

『東京小説』 
椎名誠,林真理子,藤野 千夜,盛田 隆二,村松 友視 著
コリーヌ カンタン 編集
紀伊国屋書店
1,500円+税(図書館で借りました)

本書は、複数の日本人作家が東京をテーマに短編を書き、それをフランスで出版するという企画ものだったそうです。ですから、フランスでは『Tokyo electrique』という日本人からすればちょっと不可解なタイトルで2000年に出版されています。というか、どうせなら日本語版も出そうと、後から2カ国同時刊行となったようですね。さらに2004年には『TOKYO FRAGMENTS』というタイトルで、英語版も出版されています。

盛田隆二さんのHPに、外国語版も含めて写真が掲載されています。それぞれ、東京というもののイメージが表現されていて面白いですね。日本人にとっては、やはり東京タワーなのでしょうか。フランス語の文庫版の女子学生(夜の東京を自転車を押して歩いている)はいったいなんでしょうね。これも、東京のイメージなのでしょうか。

一方、それぞれ違う持ち味の作家が、短編で共演するというのは、読者にとってはなかなか興味深いものです。普段、好きな作家の新作は読みますが、読んだことの無い作家の本に手を出す機会は少ないですから。実際、かなり意識的に拡げていかないと、難しいのではないでしょうか。

そういう意味では、こういう短編集を図書館で借りて読むと言うのは、とてもいい機会です。実際、5人のうち3人は比較的読んだことがありますが、1人はたぶん一作だけで、もうひとりは読んだことがありませんでした。

話の中では、やはり椎名誠さんのものが面白かったですね。話題になった『ホームレス中学生』ではないですが、大都会の一角で、テント生活なんていうのも意外とリアリティを持って読むことができました。

読書の秋というわけではないのですが、春から夏にかけて、本を読む時間が少なかったせいか、最近活字中毒気味ですね。
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by makani_tomo | 2008-09-09 12:57 | 読む

『白い指先の小説』 片岡義男

『白い指先の小説』 
片岡義男
毎日新聞社
1,900円+税

TJARから戻り、しばらくは活字が全く頭に入らなかったのですが、さすがに最近は以前のように、通勤時を中心に活字を追い求めています。

以前からも度々紹介していますが、片岡義男さんの小説やエッセイは好きで、高校生時代から長く愛読している作家のひとりです。

本書には4つの短編が収められているのですが、いずれも小説を書く女性が登場します。そして、いつものことではありますが、その女性たちはいずれも非常に素敵なのです。

片岡義男さんの小説を読む時、いつも気になるのは、間取りです。主人公の住んでいる部屋が描写されることが多いのですが、とても魅力的です。頭の中で、部屋のイメージを組み立てるのが、とても楽しいのです。実は大学院時代に、片岡義男的な住まいを目指したのですが、荷物が多すぎて、計画倒れに終わりました。そう、小説に出てくる人たちは、住まいも大きいのですが、ものも少ないのです。今でも、ものを減らそうという努力は続けているのですが、着なくなった服や古い本を捨てても、シューズや山の装備が増えているので、結局ものは減らず...

本題からそれました。現実の世界とは少し違うのですが、文章やもの、写真などに向かう姿勢が好きなので、今でも愛読しているのではないかと思うのです。アウトドアとは対極にあるような都会的なシチュエーションなのですが、その比日常性(小説の中ではきわめて日常的な情景として描かれていますが、現実的には非日常的だと思います。)は、山で長い時間過ごしている時の感覚と、少し近い気もするのです。もっとも、片岡さんは、山ではなく海派の様ですが。
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by makani_tomo | 2008-09-06 01:54 | 読む

『解読!アルキメデス写本』 リヴィエル・ネッツ,ウィリアム・ノエル

『解読!アルキメデス写本』 
リヴィエル・ネッツ,ウィリアム・ノエル
吉田晋治 監訳
光文社
2,100円+税

皆さんも名前はよくご存じのアルキメデス。紀元前287年シチリア島に生れ、212年に亡くなったと言われている、古代ギリシアの数学者です。彼の生きた時代から2200年後に生きている我々が、彼の業績について知ることができているのは、彼が自身の仕事を書籍として書き残していたからに他なりません。

彼の生きていた時代、文字を読み書きする能力は、とても特殊な能力でした。限られた一部の人のみが、文字の読み書きができるという時代です。文字を書き残す媒体(メディア)は、パピルスを原料とする巻物でした。しかし、2000年以上も昔のパピルスが現代に残っているものでしょうか。答えは否。もちろん、パピルスに記された文章などは、現代でも一部残ってはいますが、その多くは失われてしまっています。では、なぜ我々は、アルキメデスの著作を読むことができるのでしょうか。それは、パピルスを原材料とする巻物から羊皮紙を原材料とした冊子本へのメディアの大転換期において、冊子本による写本が作成されたからです。

印刷技術が発明されていない時代、情報を複製するための手段は手によって書き写す(=写本)しかありませんでした。多くの巻物が冊子本に写本されたと推察されますが、その基準が何であったのかは明らかではありません。しかし、現代においてもその業績が薄れないものが多く写されたことを考えると、当時の知識人の価値観や判断は、我々に近かったのかもしれません。

前置きが長いですが、もうしばらくお付き合いください。巻物から冊子本に情報が写されたとしても、それはその後2000年の保存を約束されたものではありませんでした。様々な理由はありますが、主にキリスト教が広まるに従い、祈祷書の様な宗教的な書物が多く作られる過程において、それ以前の書籍(の羊皮紙)が再利用されたのです。その様な書籍はパリンプセストと呼ばれています。

さて、本題です。本書は、アルキメデスの著作の写本(の羊皮紙)を再利用して作成された祈祷書(パリンプセスト)が、オークションにかかった末ある事業家が競り落とし、その後ボルティモアのウォルターズ美術館の学芸員がパリンプセストに残されたアルキメデスの著作の写しを解読する過程を記録したノンフィクションです。

ギリシア古代数学に関する解説を織り交ぜた構成になっており、やや難解なのですが、なぜアルキメデスの著作が2200年後に議論になっているのか、また羊皮紙にごく薄く残った文字を如何にして解読するかという作業についてはとても興味深く、引き込まれました。

一般向けの書籍ではありませんが、情報を如何に後世に残すか、後世の人々は、如何にして情報を復元するのか、そういうことを考えずにはおれない書籍でした。そういう意味では、このブログもどこまで情報が残っているのでしょうか。他人任せではなく、自分で情報を残す方法(あるいは残さない方法)を考えなくはいけなくなる時代は、すぐ近くまで来ているのかもしれません。
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by makani_tomo | 2008-09-05 01:49 | 読む

アドスポ

いよいよ発売が明日に迫りました。ヤマケイ別冊『Adventure Sports magazine』です。

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原稿を書いている関係で、発売前日に届きました。

初めて山耐に出る前には、05年版の付録のDVDを繰り返し見て、イメージトレーニングしたものです。今年度版も5人のトップランナーのインタビューや石川さんのエベレストマラソン参戦記など、なかなか読みごたえありです。

ちなみに、次号は09年3月発刊の予定だそうですよ。
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by makani_tomo | 2008-08-27 23:32 | 読む

『プリズン・ストーリーズ』 ジェフリー・アーチャー

『プリズン・ストーリーズ』 
ジェフリー・アーチャー
永井淳訳
新潮文庫
667円+税

新作が出ると必ず読んでいる作家のひとりが、ジェフリー・アーチャーです。『百万ドルをとり返せ!』から、邦訳されたものは全て読んでいますので、もう30年以上にわたり愛読していることになります。(『百万ドル・・・』の邦訳出版は1977年)

本書は、彼が刑務所に収監されている間に、囚人仲間から聞いた話をアレンジした作品を中心とした短編集です。原題の『Cat O'Nine Tails』(九尾の猫)は、かつて囚人を打つのに使われた九本縄の鞭を意味している様で、更にTailsとtalesを掛けているとか。そういえば、本書には12の短編が収められているのですが、そのうち囚人から聞いた話は9つなのでした。

聞いた話がベースになっているからでしょうか、彼一流の切れ味にはやや欠ける気はします。あと、何度読んでも少し理解できないところも。これは、僕の理解力の問題かもしれません。

と、やや辛口に書いてみたものの、やはり軽妙な語り口は秀逸です。もちろん、長年訳を担当している永井淳さんの能力に負うところも多いような気がします。

話は変わりますが、最近フレデリック・フォーサイスも新作が出ています。まだ、読んでいないのですが、作風こそ異なるものも、往年のベストセラー作家が健在なようで嬉しいですね。
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by makani_tomo | 2008-06-05 09:49 | 読む

『スパイラル』 服部真澄

『スパイラル』 
服部真澄
光文社
1700円+税

本好きの僕もここ数年は、増え続ける本の量に危機感を覚え、ハードカバーの本は控ええいます。そんな状況においても買うのが、ジェフリー・アーチャー、ジョン・グリシャム、そして服部真澄です。

本書は、エネルギー問題、海洋問題をテーマにした作品です。前作の『テラバイト』といい、彼女の作品は現代的なテーマを上手く取り入れています。参考資料を見ていると、本作品で扱っているテーマも、全く荒唐無稽なことではなさそうです。

しかし、エンディングはちょっと物足りないかな。エンタテインメント性を高めるためには、もう少し意表をつく、あるいは盛り上がる展開が欲しいかと。月刊雑誌の連載なのだそうで、やはり書き下ろしの方が、トータルのバランスは良くなるのかもしれません。
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by makani_tomo | 2008-06-01 22:54 | 読む

『小西さんちの家族登山』 小西郁子

『小西さんちの家族登山 妻が語る登山家・小西政継の素顔』 
小西郁子
山と渓谷社
1600円+税

妻から見た小西政継さんの素顔を描いた本です。普段の小西さんの姿が、余すところ無く描かれています。!!!!というくらい、やさしい小西さん。読み始めて、違和感を覚えていたのですが、読み進めるうちに、懐の深い小西さんの人となりが、なんだか自然に感じるようになりました。

本書のもうひとつの主題は、子育て論にあります。著者自身は、「~論」などという意識は、全く無いのだと思いますが、読む側としては、十分に子育て論として読むことができます。もちろん、その手の本はたくさんあり、小西家の流儀にも賛否両論あるとは思いますが、少なくとも僕は共感するところ大でした。やはり、親が自信を持って、子供に接することが大切ですね。

普段読まないジャンルの本でしたが、小西さんということで興味を持ち、読んでみて、良かったと思いました。これが、素直な読後感です。
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by makani_tomo | 2008-05-17 01:50 | 読む



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