TJAR2008(6日目)
<8月15日(6日目)>
01:00 熊の平小屋(スタート) ようやく眠りに着いたと思ったら、周囲でごそごそ。起きてみたら、岩瀬選手や須田選手、星野選手、鈴木選手がスタートの準備中でした。1時に出るとのことで、僕も付いていくことにしました。昨夜、もう少し前進しておきたかったところを休んだので、早めに出ようとは思っていたのです。出来れば、明るくなる頃に、塩見岳に取り付きたいと思っていました。 カロリーメイトを適当に食べ、鈴木選手と共に先に出たのはいいのですが、身体が重く、思うように足を進めることができません。昨年も鈴木選手とは2時スタートでこの道をたどったのでした。あの時よりも、はるかにツライです。 程なく、他の3名が追いつき、先行してもらいます。僕は、「寝ているよりはマシ」というくらいのつもりで、ノロノロと前進します。何か食べていないと倒れそうなので、サラミシーセージなど噛み応えのあるものを口に入れます。身体が動かない状態で、暗い樹林帯の中をライトの明かりひとつで進むほど辛いものはありません。この数時間が、今回の行程の中で最も苦しい区間でした。 幾度となくハイマツ帯を抜け、ようやく北荒川岳に出ました。が、そこは一面のガス。鈴木選手がガスに巻かれて停滞していました。2人で慎重に進路を探しますが、強烈な風とガスに行く手を阻まれます。仕方なく、再び風を避けてハイマツ帯に戻り、しばらく停滞です。昨年の記憶では崩落地を回り込むように進むはずなのですが、崩落地があるとわかっているだけに、迂闊に進むわけにもいきません。ここまで来て事故やコースロストも嫌なので、少し明るくなってから慎重に進むことにしました。 4時半頃になると少し明るくなってきます。どうやら、感覚は正しかったようです。程なく旧幕営地跡を見つけ、お花畑の中を塩見岳目指して進みます。ガスも晴れてきて、急に良いお天気です。やはり、明るい時間に進む方がよいですね。 ようやく塩見岳に取り付きます。昨年もこの登りはきつかった。今年もきついことには違いありませんが、ここに至るまでの疲労度を考えると、健闘しているといってよいのではないでしょうか。(自画自賛?)足場のいいところでもないので、慎重に登ります。 06:49 CP20:塩見岳 南アルプスで3つ目の大きな山を越えました。残るは荒川、赤石、聖の3つです。しかし、膝をかばっている身にとっては、登りよりも下りがきついのです。手を最大限に使いながら慎重に下ります。 ふと振り返ると、こんなに美しい景色が。確実にゴールが近づいていることを実感しました。 塩見小屋では、カップラーメンを食べながらシューズを乾かし、ソックスを交換です。駒ヶ根のスーパーで買った安いソックスで今日はこの後過ごす予定です。コーラも飲んでリフレッシュ。気持ちも新たに先に進みます。 お天気もよく、このあたりは登山者も多いエリアです。グループ客も多く、大勢の方に声を掛けられました。こうして、すれ違う人に話を聞くことで、前方にいる選手の様子を少し知ることが出来るのです。 09:57 CP21:三伏峠 小屋でCCレモンを飲みつつ、アルファ米で腹ごしらえです。水場まで少し距離があるので、小屋で水も買って補給し、スタートです。昨年は、鈴木選手とここで分かれたのですが、今年は共に進むことになりました。2人は実に心強いです。 南アルプスのコースタイムは、比較的甘いといわれていますが、ここまでかなり疲労を溜めてきた我々でも、コースタイムの60~70%で進むことが出来ますので、やはり甘いかもしれません。途中、コース脇のお花畑の中に寝転んで、シューズを脱いで2人で昼寝をしました。これがまた、至福の時でした。わずか15分程度なのですが、起きた瞬間、自分がどこにいるのかわからずあたふたするほど、深く眠っていました。お陰で、すっかり元気になって先に進むことが出来ました。 高山裏避難小屋では、何か食事を...と思いつつもカップうどんしかない様子。ジュースもないとのことなので、僕はアルファ米を食べて腹ごしらえです。程なく、西岡選手も到着しました。 いよいよ荒川岳に向かいます。ここは、アプローチが長いのです。トラバース気味に山腹を巻いて進みます。いよいよ直下まできたら、今度は低い樹林帯の中を延々と登ります。こういう時、高度計は役に立ちます。ゆっくり登っても1分で標高7m登っていることが示されます。現在の標高と山頂の標高差を考えれば、あとどれくらいの時間で到達できるかがわかります。 こういう登りで考えるのは、普段の階段トレーニングです。階段であれば、220m程を20分で歩いて登ることができるのです。足場が階段ほどよくないことを考えるても30分程度で登ることができます。(実は、先ほどの7m/分という速度は、これに近い速度です。) もうひとつ、常に思ってきたことは、「どんな1歩でも、全てゴールに近付いている」ということです。登りであれ、下りであれ、全ての1歩がゴールに向かっているのです。太平洋は果てしない先にあるように思えるのですが、全ては1歩1歩の積み重ねなのです。 17:13 CP22:荒川岳(前岳) 荒涼とした台地上の山頂にたどり着きました。ここから荒川小屋に下るには、少し中岳方面に進む必要があります。ガスっていると、ややわかり難いポイントかもしれません。 気持ちの良い夕景の中を、下ってゆきます。富士山もきれいに見えています。そして、塩見岳で見たときよりも、少し大きく見える気がしました。 荒川小屋では、時間が遅いにもかかわらず、小屋のご好意により名物カレーライスを出していただきました。大盛りで1,200円です。 おそらく、この小屋を通過するほとんどの選手が食べていると思われるカレーです。ガッツリ食べてしっかり腹ごしらえです。何といってもこの後、夜間の3000m越えが待っているのですから。 カレーを食べ終わった頃に西岡選手も到着したので、3名で夜間の赤石岳に向かいます。夜間は人数が多い方が好都合です。僕は、昨年ひとりで夜間の赤石越えをしているので、気分的には昨年よりマシというくらいのお気楽なものでした。 赤石岳は比較的楽という印象があります。それは、荒川小屋からほとんど標高を下げることなく取り付くことにあります。小屋から少し登って、あとはトラバース気味に大聖寺平に向かいます。そこからはガレた道を登ってゆきます。最初のピークまでは比較的容易にたどり着くことができます。そこから、小赤石岳を越えて、ようやく赤石岳です。 20:46 CP23:赤石岳 最初のピークからが何気に長いのです。登る途中、塩見岳でしょうか、雷雲が掛かり雷がビカビカ。しばしば音も聞こえてきて、ドキドキしながらも、その美しさに目を奪われていました。 しかし、本当の危機はもっと近くにありました。これまで、左膝をかばってきた右足大腿四頭筋がついに悲鳴を上げました。夜間の3000m峰からの下りで悲鳴を上げるとは、タイミングは最悪です。左右共に力が入らない状態では、岩場でのバランスが極めて悪くなります。背中の荷物は、軽いとはいえ7kg前後はあると思います。これまでも十分にゆっくりだったのですが、さらにゆっくり下ります。しかし、左右共に力が入らない状態では、踏ん張りが効かず、浮石に足を乗せてグラッと来た瞬間、左半身ひねり背面着地。暗いので、全体の状況はわからないのですが、3,000m近い岩場での転倒で、打撲&擦り傷で済んだのは、本当にラッキーでした。今回の旅で、最も危なかった瞬間です。 この後、百間洞までの区間は、まさに地獄でした。徐々に標高は下がるのですが、とにかく足場の悪い状態が続きます。転倒しないように、しかし踏ん張れず。「痛くない、痛くない」と呪文を唱えながらの下りです。本当にツライ区間でした。 23:00 百間洞 僕のスピードに併せてもらったため、鈴木選手、西岡選手には迷惑を掛けてしまいました。百間洞では、先着していた選手の周囲にシェルターを張り、足のケアを行います。マッサージをして、簡易鍼を貼ります。左足に一箇所マメが出来かけていたので、早めに処置をします。明日、右足大腿四頭筋は動いてくれるだろうかと不安を覚えつつ、短い眠りにつきました。
by makani_tomo
| 2008-08-22 16:51
| TJAR
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