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『狼は帰らず』 佐瀬 稔

『狼は帰らず―アルピニスト・森田勝の生と死』
佐瀬 稔
山と渓谷社 (yama‐kei classics)
1680円(税込み)

こちらも図書館で借りました。森田勝さんについても、少し聞きかじった(読みかじった?)くらいで、詳しいことは知りませんでした。K2のアタック隊で2次に回ったことを不満として、下山してしまった話ばかりがいろいろな本に取り上げられているので、どうしてもそういうイメージを持ってしまいますが、冷静に考えればそういう出来事は森田さんのごく一面であることは想像は付きます。

しかし、本書を読み進めると、かなり激しい想いを持って山に臨んでいたことがひしひしと伝わってきます。若い人にスポンサーが付いて、どんどん海外の山に登る現状からは、少し想像が付かないのですが、高度経済成長時代の日本とは、経済の発展の底辺を多くの若い労働者が支え、同時に彼らが日本の山に向かっていたのでしょう。

大学の山岳部と社会人の山岳会との確執などもあったようですが、今では大学の山岳部も廃部になるところも少なくないようで、時代の移り変わりを感じます。一方で、30年前には極僅かな最先端のアルピニストしか行くことの出来なかったアルプスやヒマラヤには、今ではお金さえ出せば、(登頂できるかどうかは別として)行くことができる世の中になっています。

山に限らず、ひとつのことにどこまで純粋に立ち向かうことが出来るか、これは生き方についての大きなテーマなのですが、今の世の中は一見仕事に思えないことでも、誰かが評価してくれると、多少はお金が付いてくる可能性も多くなっています。それだけ社会に余裕ができたということでしょう。何かを極めることに取り組み易い世の中ともいえます。一方で、自分を含めて仕事と趣味と家族とのバランスを取ることに四苦八苦している人も少なく無い、いや多くの人がそうなのではないでしょうか。皮肉なもので、社会全般に余裕が出てきたら、純粋に極める人が減ってきているのかもしれません。

僕自身、バランスを取った生活に不満を持つわけでもなく、むしろその中で如何に自分のパフォーマンスを上げるかということに挑戦しているつもりです。もちろん、森田さんの山に賭ける気概に較べることなど出来ないレベルですが。

とはいえ、森田さんも結婚して、子供が出来て、定職を持つようになり、家族のことを気にしながら山に向かっています。そういう一面を知ることが出来て、少しホッとしています。でも、それはそれで家族には辛い結末を意味しています。やはり、僕は基本的には安全な範囲内での山にしておこうと思います。昨年の夏は、ちょっと危ない遊びをしてしまいましたが、今年は控えましょう。
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by makani_tomo | 2008-05-15 10:42 | 読む
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