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『無実』 ジョン・グリシャム

『無実』 上・下
ジョン・グリシャム
白石朗 監訳
ゴマ文庫
各800円(税込み)

リーガル・サスペンスの巨匠ジョン・グリシャムによる、初めてのノンフィクション作品です。1982年オクラホマ州の小さな町で起きた殺人を巡る冤罪事件を扱っています。

事件後、捜査は思うように進まず、5年後になって容疑者として逮捕されたのは、地元出身の元プロ野球選手ロン・ウィリアムスンとその友人のデニス・フリッツ。その逮捕理由は実に曖昧です。その後の取り調べも、(本書の記述通りなら)あってはならない「真犯人の創造」です。

長い裁判の結果、ロンは死刑判決、デニスは終身刑の判決を受けます。そして、刑務所への収監。救いは、アメリカでは死刑判決を受けると、自動的に上訴が行われます。しかし、その上訴審も全て敗訴。そして、1994年9月27日が刑の執行日と決まりました。

その土壇場の状況において、弁護士が取った措置は、人身保護令状の請求でした。これは、囚人の拘禁状態が適法かどうか判断するために、囚人に出廷を求めるものです。この申請を読んだのが連邦裁判所治安判事ジム・ペインでした。その後の審議の結果、ロンの死刑停止が決まったのは、刑の執行日のわずか5日前でした。

その後、再審が行われ、ついに1999年4月15日、無実の判決が出ました。逮捕から14年の歳月が流れていました。しかし、逮捕以前から精神的な病を抱えていたロンは、その後の境遇の中で、更に病んでいました。自由の身になったものの、心の病は如何ともし難く、日常生活が平穏におくることができない状態だったのです。そして、最後は肝硬変を患い、2004年12月4日亡くなりました。享年51歳という若さでした。

おそらく、アメリカだけではなく、日本でも似たような強引な捜査は行われているのだと思います。刑務所での刑務官による暴行事件も、数年前に話題になりました。

それにしても、本人の苦痛やそれを支える家族、支援者の気持ちの強さは、想像が付きません。一方で、被害者の遺族は、釈然としない思いを、依然として抱えているはずです。
今また、ロス疑惑が再燃しています。この場合は逆の意味での(捜査当局側の)粘りです。

なお、本書がアメリカで出版された時点では、地区首席検事のビル・ピーターソン氏は、依然としてその地位に居たそうですが、現在は職を辞して自らの職務上の正当性をホームページ上で訴えています。さらに、ジョン・グリシャムを名誉毀損で訴える裁判を起しているそうです。

彼には彼の言い分があるのだと思います。彼の仕事の中で、こういう事例が全てだったとは思いません。しかし、立場の違いは非情です。多くの仕事のひとつは、相手にとっては人生の大半であることもあるのです。

グリシャム独自の緻密で深い文章です。しかし、下巻に入ると、ぐいぐい読み進むことになるでしょう。久々にどきどきしながら読み終えました。
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by makani_tomo | 2008-03-06 10:26 | 読む
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