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『テオ もうひとりのゴッホ』 M・A・オザンヌ,F・ジョード

『テオ もうひとりのゴッホ』 
マリー・アンジェリーク・オザンヌ,フレデリック・ド・ジョード  著
伊勢英子,伊勢京子訳
平凡社
2940円(税込み)

本書は、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホの弟にして最大の理解者でもあったテオ・ヴァン・ゴッホに関するものです。テオの未公開書簡を資料としているため、これまで詳しく知りえなかったテオの行動や心情などが描かれています。(現在は、当該書籍は公開されているらしい。)

ゴッホがここまで話題性のある画家として評価されている理由のひとつに、彼の手による膨大な書簡の存在があると思います。非常に筆まめであったヴィンセントの(テオ宛の)書簡は、テオの手によって非常に丁寧の保管されており、後にテオの未亡人ヨーにより整理されたことによって、後世の研究者の第一級の資料となりえたのです。もちろん、研究者の資料としてだけではなく、書簡集として多くの国で出版もされており、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホという画家に、リアリティーと物語性を付加しているのではないでしょうか。

ところで、テオが兄の死後約半年で精神病院において死亡したことは、僕も知っていましたが、それ以前にも精神面の病に苦しんでいた時期があったことは、知りませんでした。実は、ヴィンセントがテオに出した数と同じくらいの手紙を、テオは兄に書いていると思われます。しかし、ヴィンセントは弟からの手紙を残していません。僅かに残っているテオのヴィンセント宛の手紙は、「テオがヴィンセントに書き送った手紙の裏に、ヴィンセントが返信をしたためたもの」なのです。もちろん、テオは母親などにも手紙を書いており、それらは残されているのですが、ほとんどが未公開となっていたため、詳細なテオの病状などは、明らかにされていなかったようなのです。

ここからは、僕の全くの想像です。蟻の世界では、2割の蟻が良く働くといいます。(会社も?)では、その良く働く蟻ばかりを集めて集団を作るとどうなるのか?やはり、2割が良く働くらしいです。非常にわかり難い比喩を持ち出してしまいましたが、要するにヴィンセントもテオも、程度の差はあれ、基本的には精神的に脆いという性格だったのではないでしょうか。たまたま、テオのほうが少し要領がよかったのかもしれません。働き始めても、金銭的に一家を支える役割を背負ってしまったテオは、兄との関係、家族との関係においては、精神面の脆さを押さえ込混ざるを得なかったのかもしれません。もちろん、そのベースには、家族への愛、兄の才能への畏敬の念があったはずです。

晩年のテオは、梅毒を原因とする精神障害に悩んでいた様です。そこに兄の死という出来事が重なり、彼の中のかろうじて保っていた精神面のバランスが、一気に崩れてしまったような気がしてなりません。テオも、兄同様戦い続けていたのかもそれません。

久しぶりに、オーヴェールの麦畑を見に行きたくなりました。

余談ですが、訳者の伊勢英子さんと京子さんも姉妹で協力して、本書の翻訳にあたったそうです。
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by makani_tomo | 2007-11-12 19:54 | 読む
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