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ひとり選考会B(その3)太郎平小屋から上高地

12:33 太郎平小屋

ちょうどお昼時ということもあり、大勢の人が集まっていました。ああ、ゆっくりお昼ご飯を食べたいなぁ。ビールなんか、いやいや、ローストビーフのサンドイッチにワインなんかいいなぁ。ピクルスも添えたいものです....と妄想ひとしきり。

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現実は、そう甘いものではなく、水だけを補充し、座ることもなく先を急ぎました。予定よりも遅れ気味なのは分かっていました。足の裏に違和感を感じ始めたのもこのあたりからです。いま考えれば、ここでちゃんと座って処置をして、立て直したほうが良かったのかもしれません。でも、替えの靴下を持っていなかったから、結果は同じかもしれません。

木道をひたすら進みます。こういう道って走っていいのか悩みます。ガシガシ走ると痛んでしまいそうですし。まぁ、そうスピードが出せることもないのですけど。実際、このあたりからパックが肩に食い込んできて、非常に辛くなり始めました。小さなハンカチを当てたりして、痛みを和らげたのですが、それにも限界があります。もちろん、ある程度の重さに慣れることは必要ですが、軽量化も同時に考えねばなりません。

このあたりは、じつい景色も良いのですが、いかんせん目指す山が見えません。いや、自分が分かっていないだけかもしれません。とりあえず、黒部五郎岳が目標なのですが、遠いということもあり、なかなかその全貌を見ることが出来ません。

北ノ俣岳への途中で、ついに足の処置をすることにしました。荷物を降ろし、石の上に座り、シューズを脱ぎ、靴下を2枚脱ぐと.....ひどい状況です。これは、早めに処置をして良かった。かなり大きな水ぶくれの一歩手前です。バンドエイドで対応できる大きさではないので、キネシオでとりあえず保護します。やはり、序盤に濡れた状態になっていたのが良くなかったのでしょう。それにしても、この様に大きなのは、初めてです。何事も経験と割り切り、先を急ぎますが、足裏に力が入らず、思うように進めません。

ようやく、黒部五郎岳が見えてきました。いや、でかい!迫力あります。圧倒されそうでした。いやされました。う~んと考え、登る前に、いま一度足裏に今度は固定テープを貼り、更なる保護を施しました。

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とにかく前進あるのみ。こんな中途半端なところでは、足を止めてはいけないのです。ピークの手前で、カールに降りて行きます。巨大な岩がオブジェのようです。ペンキ印を見落とさないように慎重に進みますが、沢を渡ったりと、平坦な割にはなかなかスピードが上がりません。それでも、日のあるうちに通過できているだけマシでしょう。ここで夜だと、ちょっと時間が掛かってしまうかもしれません。

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17:18 黒部五郎小屋

休憩や足の処置を2回していたこともあり、ずいぶん遅れて黒部五郎小屋に到着です。コーラを2缶買い求め、1つを開けてミニクリームパンを食べました。あぁ、美味しい。水を補充し、荷物の整理をしていたら、精悍な若者から声を掛けられました。彼こそが、室堂を出発し、僕の前を行っていた2人組のうちのひとりでした。彼も、選考会Bに出る予定だったのだとか。ああいうところで、同好の士に出会えると、実に嬉しいものです。

三俣蓮華岳を目指します。幸い、まだ空は明るく、キツイながらも安心して進むことが出来ます。少しガスも掛かってきましたが、それもまた幻想的ですらあります。良く見ると空にはいちばん星。今夜は月明かりも期待できそうです。

富山・岐阜・長野3県の県境でもある三俣蓮華岳に着く頃には、さすがに薄っすらと暗くなってきました。ライトを点けるほどではありませんが、用意をしておきます。

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進路を南にとり、丸山を越え、双六岳との分岐点に到着です。左側の中道ルートを進みます。再びカール状(と思われる)エリアを進みます。とにかく、焦らず慎重に進むことを第一に心掛けました。経験のない分は、ひと一倍の慎重さで補うしかないのです。時々コンパスで進路の向きを確認します。ここは、概ね南東に進むはずです。

下り基調なのに思うようにスピードが出ないのがもどかしいですが、スピードよりも間違わないことが優先です。それにしても、星がきれいです。なんだか、独り占めしているような、そんな贅沢な気持ちにすらなります。すると前方に小屋の明かりが見えてきました。双六小屋に違いありません。進めど進めど、なかなか小屋に着かないのですが、確実に明かりは大きくなっています。次第に、ポンプの音が聞こえてきました。

19:54 双六小屋

小屋の外では、数名がのんびりタバコなど吸っており、僕が進路の確認をしていたら、ひとりの男性から、「どこから来たの?まだ、先に進むの?十分に気をつけてな。」って声を掛けられました。

樅沢岳へは、ほぼ直登というイメージでしょうか。概ね東に向かうということを頭に入れ、あとは踏み跡をたどりながら登ります。さすがに2回目のナイトステージですから、少しは慣れて来たでしょうか。でも、緊張は続きます。ときおり風が強く吹きます。しかし、空が明るいのが幸いでした。

進路を南東に変え、いよいよ西釜尾根です。(といっても、本当のところ、どこが西鎌尾根の起点なのかは、よく分かっていません。)更に緊張は高まります。眠気はなし。集中力も持続できています。道の雰囲気と踏み後をたどりながら、慎重に進みます。ここで迷ったら、明朝までの停滞は免れません。しかし、1回だけ迷ってしまいました。進んでは戻り、進んでは戻りを繰り返し、20分ほどで正しいルートを見つけることが出来ました。あぁ、よかった。

クサリ場も暗いせいか恐怖感はまるでなし。ただただ、槍の肩を目指して進みます。もう、このあたりになると、夢中です。記憶もところどころしか残っていないという状況です。特に風景については、クサリの様子とか、そういうことしか覚えていない状態です。

23:45 槍ヶ岳山荘

からくも24時間以内に槍まで来ることが出来ました。しかし、ゴールはまだ先です。ここは休むことなく、小屋の前から殺生ヒュッテに向かって下ります。ここから先は、概ね下りのはずです。残り時間は5時間ありますから、大チョンボとか大怪我さえしなければ、制限時間以内にゴールできるはずです。

雪渓の下りもトレースがあるので問題なし。でも、下った後にどちらに行くのか、少し迷いました。そういえば、高橋さんも昨年のレースで迷ったと書いてありました。時おり風が吹き上げてきて、寒くなったので、ツェルトを取り出して、首の周りなどに巻き、その上からジャケットを着ます。これは、暖かくて快適です。

ただただひたすら、進みます。少しぼんやりしてきて記憶も曖昧です。分岐では間違わないように、進路を確認します。このあたりも概ね南東に進みます。槍沢沿いをどんどん高度を下げていきますが、途中河原に近いが遠回りそうな道と、草に覆われているが直進する道では、迷わず直進を選んでしまい、数分で引き返す羽目に。暗い上に草で足元が照らせず、思わずすっ転んでしまったのです。大失敗。

しかし、このあたりまで来ると、後はひたすら川沿いを進むのみです。傾斜も徐々に緩やかになり、道も良くなります。槍沢ロッジあたりから先は、もう惰性で進んでいく感じです。日中であれば、実に気持ちの良いトレイルランが楽しめるエリアですね。しかし、今回はマシンのようにただひたすら進むのみです。木陰に入り、空も見えにくくなると、美しい星空を楽しむ余裕もなくなります。でもいいのです。とりあえず、進むのです。

徳沢で6.4kmの看板を見ました。うん、充分間にあう。少し余裕を取り戻しましたが、足を止めたくはないので、ひたすら進みます。明神館を通り過ぎ、だんだん気持ちも身体も楽になってきました。ふと気付いたら、河童橋。なんだか、あっけなくゴールに到着です。

28:17 河童橋

ほっとしましたが、不思議と疲労感はあまり感じませんでした。達成感というよりは、自分がどういうところを来たのか、良く分からないもどかしさが残りました。足の裏の痛みは、長い下りで忘れていました。

それにしても、こんなに静かな上高地は初めてです。とりあえず、公衆電話の中に腰を下ろしましたが、狭くて落ち着かないので、ベンチに座り、ひと休みです。しかし、緊張感は持続しており、なんだか寝ることは出来なさそうです。頭では、さて今日一日どうして過ごそうかと考えはじめていました。
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by makani_tomo | 2007-08-10 10:16 | TJAR
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