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『フェルメール全点踏破の旅』 朽木ゆり子

『フェルメール全点踏破の旅』 
朽木ゆり子
集英社新書
1000円+税

最初に断っておきますが、この本を買ったのは「踏破」の2文字に反応したからではありません。純粋に絵画が好きなのです。

祖父は画家でした。広島県の福山出身で、東京美術学校に学びました。優秀でその後の活躍が期待されていたのですが、とある名家の令嬢と結婚するために、不安定な画家ではなく、中学校の美術教員の道を選んだそうです。

その祖父と、小学生時代の数年間一緒に暮らしたことがあります。当時はもうあまり絵を描いてはいませんでした。むしろ、興味は壺に移っていたようで、中国の古い壺を良く眺めていたのを覚えています。

家には祖父の絵がたくさんありました。しかし、そのほとんどを小学生の僕は好きになれませんでした。暗い色調で、どこか陰鬱な雰囲気が好きになれなかったのです。今にして思えば、陰影の妙など、わかるはずも無かったのですが。

しかし、画集など家にはたくさんあり、その中で好きになったのがゴッホでした。明るい色調に惹かれました。その後、中学に進み、図書館でピカソやダリ、マネ、マグリッドなど幅広く絵に親しみました。

中でもゴッホは好きでした。高校時代には、ゴッホの精神面にも興味を広げ、『ゴッホの手紙』やカール・ヤスパースの『ストリンドベルクとファン・ゴッホ』など読みふけったものです。

大学時代には両親がパリに住んでいたこともあり、ヨーロッパに出かけて、ゴッホの絵を実際に見る機会に恵まれました。そして、絵だけではなく、絵に描かれている風景を実際に眺めてみようと歩き回りました。特にゴッホ終焉の地オーヴェル・シュル・オワーズの麦畑に立った時には、自分がゴッホの絵の一部になった錯覚におそわれたものです。

話がかなりそれました。フェルメールは、昔から気にはなっていたのですが、直接興味を持ったのは、映画『真珠の耳飾の少女』を観てからです。正確にはトレイシー・シュヴァリエの原作を読んでからです。

本書は、美術面からの絵画の専門家ではなく、どちらかと言うとジャーナリストの視点で、フェルメールの作品について書き綴っています。その解釈は、専門家の表現に補われているものの、非常にわかりやすいものです。フェルメールという名前は知っているけど、絵をちゃんと見たことが無いという人でも、この本は普通に読むことができると思います。そして、読み終わったら、フェルメールを観に行きたくなることでしょう。しかし、日本にはないのです。残念。

祖父の死後、七回忌に回顧展が行われました。美術館や個人の方々に、祖父の絵画をお借りして行われました。そこには、僕が今まで見たことも無い、鮮やかな色彩の祖父の絵が集められていました。いい絵は、売れていたのですね。

ちなみに、祖父の絵画の才能は孫には遺伝しなかったようです。これも、残念。
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by makani_tomo | 2006-12-09 02:11 | 読む
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