『殉教(マルチル)の刻印』
渡辺千尋
長崎文献社
1600円+税
本書は、かつて小学館から発行され、2001年の小学館ノンフィクション大賞優秀賞に選ばれた作品の復刻版です。
1597年に長崎県有家(ありえ)で制作された銅版画の謎を解き明かす試みを綴ったノンフィクション作品です。
偶然立ち寄った地元の美術館で開催されていた「渡辺千尋 -復刻の聖母-」展を見て、何となく興味を持って買った本です。
もともと、大学院で「情報メディア論」を教えており、印刷技術には興味があり、また渡辺氏と同じエングレーヴィングという手法を使う版画家の門坂流氏の小さな作品を持っていることから、銅版画には興味があり、そして渡辺氏と門坂氏は2人で展覧会を開催したことがあることを知り、何となく縁を感じたのです。
そして、ふと買ったこの本が、非常に面白かったのです。まだ1月ですが、2014年のベスト10には確実に入るでしょう。
殉教者と同じルートを、当時と同じ29日間かけて歩き通す著者の根性も好きです。
そして、この銅版画の謎を1つ1つ解き明かす緻密さ。これは、緻密な作業が求められるエングレーヴィングという手法にも通じるモノがあります。
そして、銅版画家ならではの視点で謎に迫るあたりは、かなり鳥肌モノです。
アマゾンでは古本しか出てきませんが、
長崎文献社のHPからは注文できますので、興味のある方は是非読んでみてください。